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HOME > 2016年2月号 圧倒的博多港時代の幕開け

国土交通省は1月、2015年中にクルーズ船で入国した訪日外国人旅客数が前年比2.7倍の約111.6万人(概数)だったと発表した。この数字は、2020年の目標としていた100万人を5年も前倒しして超えたもので、日本はいよいよ「クルーズ100万人時代」を迎えた。そんな中、クルーズ船の一大寄港地となっているのが福岡だ。近年、博多港の外国船社が運航するクルーズ船の寄港回数は急増し、2015年には国内航路を含むクルーズ船寄港回数で全国最多となった。福岡市の高島宗一郎市長はこの結果を受けて会見で、「圧倒的博多港時代の幕開け」と述べた。

アジアの中の福岡

 

九州の玄関口である福岡市は、外国人旅行者の大半が東アジアからの旅行者で占められている。地理的に近く、国際空港、国際港という窓口を自ら持つという恵まれた条件下にあることはもちろんだが、福岡市の東アジア市場へ向けたインバウンド推進に取り組んできた結果であり、それは1987年に策定された福岡市のマスタープランにまでさかのぼる。

 

福岡市では、「アジアとの交流」が市政の核として盛り込まれ、1989年のアジア太平洋博覧会の開催をはじめ、アジアを意識したまちづくりを展開してきた。その結果、「アジアの中の福岡」という認識が広く共有され、福岡市では観光交流に限らず、貿易、ビジネス、スポーツ、文化、学術研究など幅広い分野におけるアジアとの交流が、行政、民間企業、大学、市民など、あらゆる主体によって盛んに行われてきた。

 

つまり、インバウンド政策としてではなく、まちづくりのコンセプトとしてあらゆる角度でアジアとの交流を進め、物理的な距離だけでなく、心理的な距離を縮めてきたのだ。福岡市の東アジアへの強さの裏にはこうした戦略があり、アジア市場をターゲットとした外国人観光客誘致の取り組みを推進できたのもこのためだ。

 

 

クルーズ船寄港回数が全国最多に

 

インバウンド推進において、福岡市の高い戦略性が見て取れる具体的な取り組み事例として、中国からのクルーズ船の誘致がある。

 

一般的にクルーズの旅行者は寄港地での滞在時間が短い。また、日本では豪華なイメージがあるが中国発のクルーズ船の多くは、旅行形態としては比較的安価な部類で、利用する中国人旅行者のメインは中間層となり、富裕層の旅行者に比べ経済効果も限定的だ。しかし、福岡市はこうしたクルーズの特徴を逆手にとって、戦略的に誘致、受け入れに取り組んできた。

 

クルーズ船は午前9時に博多港に来航し、同日の午後6時に出港するまで、乗客の市内滞在は半日程度。買物時間もせいぜい2時間から3時間となる一方で、1000人規模の旅行者が定期的・安定的に来訪するうえ、旅行者の規模・国籍・来訪時期が事前に把握できる。

 

福岡市ほどの規模で外国人旅行者の受入環境を恒常的に改善しようとすれば、莫大なコストと長い時間が必要だが、受入環境を期間や場所を絞り込んで整えることは可能になる。商業施設を例にすれば、クルーズ船の来航にあわせて中国人スタッフが配置されるなど、いわゆる「クルーズ・シフト」で対応しているケースだ。

 

行政としても、入港料や岸壁使用料の値下げ、博多港から街中までのシャトルバスの無料化などを通じてクルーズのさらなる誘致に取り組んできた。

 

その結果、博多港のクルーズ船寄港回数(国内航路を含む)は、2013年38回、2014年115回と急増。2015年には259回となり、12年連続1位だった横浜港を抜いて全国最多となり、2016年には約400回とさらに増える見込みだ。

 

博多港に寄港した外国クルーズ船客の9割以上を占める中国人旅行者の消費動向では、1人あたりの平均消費額は10万7千円に上り、2012年の3万7千円と比べ約3倍に増加。購入商品の1位は化粧品、2位は健康食品、3位は菓子類で、市中心部での消費が目立ち、「爆買い」の実態を裏付ける結果となり、今後のインバウンドのさらなる拡大が期待される。

 

 

 

 

 

 

 

様々な課題も

 

近年の博多港に寄港するクルーズ船の急増で、様々な問題も浮上してきている。クルーズ船では、多いときには一度に数千人が入国するため、入国審査に2、3時間かかること。さらに博多到着後、観光客は主にバス移動だが、観光バスや駐車場の不足、市街地での渋滞問題など交通面においても様々な課題あり、受入環境の本格的な整備が急がれている。

 

福岡市では寄港ラッシュに対応するべく、2015年5月にクルーズセンターを中央ふ頭に開設。博多港では、これまで国際ターミナルの8台のブースで入国審査を行っていたが、同センターでは最大20台のブースの設置が可能で、出入国審査がより円滑になり、1000人、2000人クラスの大型船による大規模な博多港発着クルーズも可能となった。

 

交通システムの改善としては福岡市と西日本鉄道が協力し、より多くの人が乗車できる「循環BRT」という連節バスにより渋滞緩和等に取り組むとしている。ルートは「博多駅」「天神」「ウォーターフロント地区」という都心3拠点間を結ぶ両回り循環ルートで、主要地点のみ停車の快速運行。2016年度にまず2台の連節バスを導入し、運行上の安全性・課題確認を順次行いながら段階的にシステムを形成し、循環ルートでの本格運行へ移行するスケジュールだ。

 

 

ウォーターフロントネクスト

 

福岡市では、人と環境と都市活力の調和がとれた「アジアのリーダー都市」をめざし、次のステージに飛躍するために、「FUKUOKA NEXT」として様々なチャレンジを一体的に推進しているが、そのリーディングプロジェクトがウォーターフロントネクスト(中央ふ頭・博多ふ頭の再整備)だ。

 

国内外から多くの人が集まる日本でもトップクラスの交流拠点となっているウォーターフロント地区の港湾、MICE(会合、報奨旅行、会議、展示会)など、地区の強みをさらに伸ばすとともに、天神・渡辺通地区、博多駅周辺地区に並ぶ、賑わいある都心の新たな拠点として、今後、再整備する計画だ。

 

福岡市は、地理的優位性や会議誘致主体・参加者の集積など、MICE誘致・開催において大きな強みを有している。2014年の国際会議開催件数は、全国で2590件、うち福岡市の件数は336件、6年連続全国2位。福岡市は全国一の増加件数で、全国の増加件数163件のうち約半数(83件)が福岡市の増加によるものだ。2013年には観光庁よりグローバルMICE戦略都市に選定されており、これまで以上に観光庁やJNTOと連携し、国際会議の誘致を進める予定だ。

 

現在、ウォーターフロント地区のコンベンションゾーンには、4つのコンベンション施設(マリンメッセ福岡、福岡国際センター、福岡国際会議場、福岡サンパレスホテル&ホール)が集積し、年間約250万人が来場する国内有数のコンベンション拠点を形成しているが、宿泊や賑わい機能が不足しており、施設の一体性や連続性が確保されていないことから、MICE誘致の国際競争力上の課題となっている。

 

MICE機能強化の方向性としては、MICE参加者の利便性が高く、国内外のMICE先進都市ではすでに実現している展示場、会議室、宿泊、宴会場などのMICE関連施設や飲食店、休憩所等が徒歩圏内に一体的・機能的に配置される「オール・イン・ワン」をめざしている。

 

また、この地区の顔となるエントランスゾーンにおいては、シンボリックで賑わいのある交流空間の創出や分かりやすく効率的な交通処理を実現するとしており、ホールとホテルを備えた「福岡サンパレス」の解体を前提に、JR博多駅から延びる「大博通り」と臨海部を結ぶ公共交通専用道を整備。近くに新しいホールを建設し、海の玄関口を一新するとしている。

 

 

 

福岡の時代がやってきた?

 

福岡市は、ウォーターフロント地区(中央ふ頭・博多ふ頭)の再整備にあたり、計画提案公募を実施したが、応募件数は19件(単独15件、グループ4件)と、150万都市としては異例の提案数の多さで、福岡市の将来性に対する期待の高さを表す結果となった。

 

応募があった19件のうち、応募者から承諾が得られた17件について提案概要書が公表されているが、大型クルーズ船が6隻同時に着岸できる岸壁整備や、博多駅と同地区を結ぶロープウエーの設置、ホテルやカジノなどを想定した統合型リゾートの導入などを盛り込んだ夢のある案が寄せられている。

 

福岡市では、2015年度中にまちづくりの進め方など具体的な再整備計画を策定し、2016年度以降に事業者を公募する。MICE関連では、第2期展示場開館、関連インフラの併用開始を2020年を目標に事業スケジュールを進めている。ウォーターフロント地区全体の完成については、20年以上先になるとも言われているが、都心の新たな拠点づくりに期待したい。

 

 

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