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HOME > 2018年11月号 エリア特集「平尾」

都心に近く、生活施設が充実した暮らしの街「平尾」。今回は、幕末の女流歌人で維新の先覚者でもあった野村望東尼が、夫と一緒に世間から離れ、ひっそりと暮らし、歴史の舞台にもなった「平尾山荘」と、自然豊かで美しい日本庭園「松風園」を紹介する。

歴史の舞台となった平尾山荘

 

幕末の女流歌人で維新の先覚者でもあった野村望東尼(のむらぼうとうに ※「もとに」とも)が住んだことで知られる平尾山荘(福岡市中央区平尾5丁目)。今では都心に近く、生活施設が充実した暮らしの街となっているが、その当時、福岡城から2キロメートルほど南下したこの山荘は平尾の人家とも離れ、山番が寝泊まりをする掘建小屋があるくらいで、庵は松の大木の間にひっそりと建てられていた。

 

野村夫妻が初めてここに草庵をつくり閉居したのは、1845(弘化2)年、望東尼40歳の秋のことだが、準備に着手したのはその6、7年前からのようだ。地味は悪かったが、山陰から湧き出る清泉があって、早天の時も枯れず、お茶の水には最適のものだった。素朴な山荘の自然をこよなく愛した望東尼は、その情緒を多くの歌に詠んでいる。

 

〽山松の木の間の月を眺むれば まさに我が身は世をのがれけり

 

和歌の師・大隈言道も山荘には度々訪れ、歌友たちが集って風流な歌会も催された。この時の平尾山荘は幕末の福岡に花開いた文化サロンのようだったのかもしれない。

 

夫・貞貫に先立たれると得度剃髪し受戒、招月望東禅尼(俗名はモト)となった。この時54歳。この戒名をもって現在、野村望東尼と呼ばれている。そして、望東尼の宿願であり、運命を変えることになる上京をするのが、56歳の時だ。

 

上京によって望東尼は愛国の精神の自覚を強めた。夫と別れるまでは良妻賢母として、女流歌人としての生活だったが、京都の地を踏み、御所を拝観し、京都に集まる諸国の志士の様子などを見聞。1858(安政5)年の大獄後、天下の形勢が刻々に移り行く様を見て、多感な望東尼は心を動かさずにはいられなかったのだろう。この頃から、「まさに我が身は世をのがれけり」と詠った平尾山荘は、風流韻事の場所ではなく、志士が国事を議する秘密の集会所となっていった。

 

京都で知り合った福岡藩御用達の馬場文英とは手紙で情報を交換し合い、彼から届いた京都の情勢を綴った密書はただちに志士たちに回覧された。こうして歴史のいち舞台となっていった平尾山荘で、望東尼は親子ほども年の離れた若者たちと和歌を詠むことで心を通わせたという。

 

長州の高杉晋作が、福岡に亡命してきたのは、1864(元冶元)年11月のこと。晋作は長州藩の内部抗争の末、藩の実権を握った反対勢力である俗論党から身を守るため、福岡藩志・中村円太らの計らいで、平尾山荘に潜伏することとなる。長州藩内の事態の推移を黙ってみていることができず、再挙を図るため危険を覚悟して、10日間余りで藩に戻ったが、その時、望東尼は晋作のために着物を縫って与えている。

 

長州に戻った晋作から御礼の手紙が望東尼のもとへ届けられるとそこには、常に死を賭して行動しているので、もはやこの世で会うことはないであろうが、来世でお礼をしたいと書かれていた。しかし、その2年後には、遠島を命じられ姫島の獄中にあった望東尼を救出するという形で、晋作は望東尼への恩返しを果たすことになる。

 

望東尼は、晋作が待つ下関に連れて行かれ、そこで2年ぶりに再会するが、晋作の体はすでに結核に侵されており、彼女はその死を看取っている。死の床で「おもしろきこともなき世をおもしろく」と晋作が詠み、力尽きると、望東尼が「すみなすものは心なりけり」と受けたと言われている。

 

 

 

 

 

自然豊かで美しい日本庭園「松風園」

 

平尾地区の閑静な住宅街にある「松風園」。中洲にあった玉屋百貨店の創業に関わった故田中丸善八氏の旧宅の一部を整備して造られた日本庭園で、既存の茶室「松風庵」と桂離宮の卍字亭を模した「あずまや」は修復され、庭園、茶室、正門などは新しく建設されている。

 

腰掛け待合い、つくばい、石灯籠などを配し、野点(のだて)広場、露地などを備えた趣のある日本庭園で、園内の緑は素晴らしく、四季折々にわたって楽しむことができる。園の入り口横にはエレベーターも設置され、バリアフリーになっている。

 

 

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