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HOME > 2017年7月号 家族信託をご存知ですか?

信託の仕組みを利用した家族への財産管理や承継を指す「家族信託」。2007年に施行された改正信託法で、高齢者の財産管理や遺産の承継に信託を利用しやすくなり、注目されている制度ですが、一般家庭に認知されているとは言い難いのが現状です。今回は、家族信託の基本的な概要と仕組み、実際の活用例を紹介します。

家族信託にはどんなメリットがある?

 

「家族信託」とは、一言でいうと財産管理のいち手法です。資産を持つ方が、自分の老後の生活・介護等に必要な資金の管理および給付などの特定の目的で、保有する不動産・預貯金等の資産を信頼できる家族に託し、その管理・処分を任せる仕組みで、家族の家族による家族のための信託(財産管理)とも言えます。

 

家族信託に登場する人物は、信託財産の現所有者で信託を設定する「委託者」、委託者が信頼でき、信託財産の管理・処分を託される「受託者」、信託財産から生じる利益を受ける「受益者」の3人で、場合によってはこれに「信託監督人」「受益者代理人」が加わります。

 

代表的なメリットとしては、(1)成年後見制度よりも柔軟な財産管理を実現できること。(2)法定相続の概念にとらわれない資産承継を実現できること。(3)不動産の共有問題・将来の共有相続への紛争予防に活用できることなどがあげられます。

 

メリットをそれぞれ説明すると、(1)では、毎年の家裁への報告義務があり、資産の積極的活用や生前贈与、相続税対策ができない成年後見制度(法定後見・任意後見)は負担と制約が多いですが、家族信託で元気なうちから資産の管理・処分を家族などに託すことで、元気なうちは本人の指示に基づく財産管理を行い、本人が判断能力を喪失した後は本人の意向に沿った財産管理をスムーズに実行できます。加えて、積極的な資産運用・組替え(不動産の売却・買換・アパート建設等)も、受託者たる家族の責任と判断で可能となります。

 

(2)では、通常の遺言ではできない2次相続以降の資産承継先の指定ができることで、委託者の意向に沿った形で、財産の動きを管理・運用できます。1次相続の方法についてのみ指定できる遺言書よりも自由度が高い形で、個々の被相続人あるいは相続人の意向に応じた相続の仕組みを柔軟につくることができます。

 

(3)では、共有不動産は共有者全員が協力しないと処分できませんが、共有者(又は共同相続人)としての権利・財産的価値は、平等を実現しつつ、管理処分権限を共有者の一人に集約させることで、不動産の塩漬けを防ぐことができます。

 

一方、家族信託に特にデメリットはないと言われていますが、勘違いしやすい点、注意すべき点としては、家族信託自体に節税効果がないこと、受益者は財産の取得は行わないが、税務上は財産を取得したものとされ、みなし相続財産として課税対象となること、受託者を誰にするかで揉める可能性があることなどがあげられます。

 

 

実際の活用事例(1)

 

【概要】

・父は65歳で現在のところ認知症の心配はない。

・父の財産は自宅と少々の現金である。

・家族会議をしたところ、Aさんが両親の老後の面倒を見る代わりに自宅を相続することになった。

・妹はこの内容で納得しているが、将来約束を守ってくれるか心配。

 

【従前の対策】

父に家族会議の内容通りの遺言書を作成してもらう。しかし、場合によっては父が「俺が死ぬのを待っているのか!」と抵抗したり、遺言書作成までに認知症になったり、妹夫婦が父に取り入って妹にとって都合の良い遺言書を書かせるのではないかといった心配がある。

 

【家族信託を活用した対策】

委託者を父、受託者をA、受益者を父、信託財産を自宅として、父の死亡により信託は終了し、自宅はAさんに帰属するという信託契約を締結する。

 

父の存命中の受益者は父であるので、実質的に父が従前と同様に自宅を所有していることになり、父の死亡によって自宅はAさんに帰属するので、遺言によりAさんが自宅を取得したのと同様の効果がある。「遺言書の作成」というより、「家族会議の合意事項を記録しておこう」というお願いの方が取り組みやすい。

 

 

実際の活用事例(2)

 

【概要】

・Bさんは事業を行っており、中学生の孫が将来はその事業を継いでくれると言っている。長男は一般企業に勤めている。

・Bさんは孫の今後のイベント毎にお祝い金を渡したいと考えているが、もし自分が認知症になったり、死亡してしまった時に確実に孫にお祝い金が渡るかどうか不安。

 

【従前の対策】

Bさんが認知症になって成年後見人をつけると、孫への贈与はできなくなる。認知症発症前なら遺言で孫へ遺贈は可能であるが、一時にお祝い金を渡すことになり、イベント毎に渡すことができない。そこで存命中、死亡後を通じて長男にお願いをするしかなく、確実に孫にお祝い金が渡るかどうか不安。

 

【家族信託を活用した対策】

委託者をB、当初受益者をB、二次受益者を孫、受託者を長男、信託財産をBさんの〇〇銀行普通預金として、信託財産の給付は次のとおりとする家族信託契約を締結する。

給付は、高校入学時に50万円、大学入学時に100万円、就職時に100万円、結婚時に100万円。

 

確実に将来のイベント時にお祝い金を渡すことができる。また、孫が事業を継がなくなった時は、信託契約を終了させることを付け加えた。

 

しかし、天神地区においては、福岡市が2015年に発表した天神ビッグバンプロジェクトの第1号案件である地上16階建てのオフィスビル「天神ビジネスセンター(仮称)」が具体化し、今後のオフィス市場の活況やアジアのリーダー都市をめざす福岡の新しく生まれ変わるビジネス街に多くの期待がかかる。

 

 

このように従前の対策では解決できなかったことが、家族信託を活用することで、委託者の思い通りに、また家族会議で話し合った通りに将来を描くことが可能になります。認知症になると実質的にその人の財産は凍結状態になるうえ、遺言・贈与ができなくなり、信託契約もできません。だからこそ健康なうちに「誰かを信じて」「何を託して」「(自分も含めて)誰に利益を享受してもらうか」をよく考え、契約しておくことが大事なのです。この機会に揉め事を回避でき、認知症対策にもなる家族信託を検討してみてください。

 

 

 

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