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HOME > 掲載記事(鹿児島) > 2017年5月号 鹿児島歴史探訪─薩摩藩英国留学生

1865(元治2・慶応元)年4月17日、19名の若き薩摩藩士が密かにイギリスへと旅立った。薩英戦争によって攘夷の不可能を知るとともに、西洋の進んだ文化や技術に驚かされた薩摩藩が、国禁を犯してまで派遣した薩摩藩英国留学生だ。現地で「薩摩スチューデント」と呼ばれた彼らは、学問や技術を習得し、その留学経験は後の日本の近代化に大きく活かされた。

五代友厚上申書

 

1862(文久2)年9月、武蔵野国生麦村(現・神奈川県横浜市鶴見区生麦)付近でのこと。薩摩藩国父島津久光の行列に、日本見物中の英国人一行4人が騎乗のまま乱入し、供回りの藩士たちが殺傷(1名死亡、2名重傷)してしまう。尊王攘夷運動の高まりの中、この「生麦事件」の処理は大きな政治問題となり、翌年、そのもつれから薩英戦争が勃発する。この時に後の薩摩藩英国留学生となる五代友厚、寺島宗則が捕虜となっている。

 

薩英戦争後、イギリス側の捕虜となり、罪人扱いとなったことから長崎に潜伏していた五代友厚は、トーマス・グラバーと懇意の間柄になり、世界の情勢を知ることになる。そして、危機感を感じた五代は、一時身を隠していたことを藩に謝罪した上で、薩摩藩に対して今後の国づくりに対する上申書を提出する。

 

「これからは海外に留学し、西洋の技術を習得してこないと世界の大勢に遅れ、国の発展に役立ちません」

 

上申書には、新式器機の購入による藩産業の近代化、近代技術・知識獲得のための海外留学生の派遣、外国人技術者の雇用、これらの経費に対する詳細な捻出方法(上海貿易等)など具体的な内容までも含まれていた。

 

留学生派遣の計画は、すでに島津斉彬の構想の一つとして英・米・仏への派遣計画があったが、斉彬の急逝により実現されずにいた。富国強兵に努めていた薩摩藩の政策に五代の上申書が引き金となり、藩命によるイギリス留学が決定された。

 

 

薩摩スチューデント

 

鎖国の最中、洋行は禁止のため、表向きの辞令は「甑島・大島周辺の調査」だった。選ばれたのは視察員4人と留学生15人。留学生は、藩内から選ばれた優れた若者が西洋の進んだ技術や学問を学ぶ薩摩藩の洋学校「薩摩藩開成所」を中心として選抜された。

 

1865(元治2・慶応元)年4月17日、留学生たちは薩摩郡串木野郷羽島村(現在の鹿児島県いちき串木野市羽島)の港から、トーマス・グラバーの持ち船であるオースタライエン号で密航出国した。

 

乗船すると直ぐに刀を取り上げられた。イギリス人や中国人の船員に囲まれ、外国語が飛び交う船内は既に外国であり、イギリスまでの旅路は見るもの全てが驚きだった。

 

香港では、ガス燈で彩られた夜景に見惚れ、建造物の大きさに驚いた。当時建設中のスエズ運河も見学し、スエズからアレクサンドリアまでは汽車に乗り、その速さに驚いた。マルタ島ではイギリスの近代軍事施設をはじめ、西洋の最も近代的な建物や兵器などを見学。地中海周辺の古代兵器などを集めた博物館も訪れ、日本とは比べものにならないほど昔から発展していたことに驚くとともに、攘夷の空しさを実感した。五代は、マルタ島までの船旅を終えたところで、「留学生の近代化に対する認識を変えさせるという初期の目的は、すでにここまでの旅で達成できた」と藩に手紙を送っている。

 

5月28日(旧暦)にイギリスに到着する。ロンドン駅で出迎えてくれたのは、トーマス・グラバーの兄、ジェームス・グラバーだった。イギリスで使節団は紡績機械、銃砲、艦船などの交易及び外交面の交渉に奔走した。一方、留学生は語学合宿後、ロンドン大学に入学し、英国軍事学の基礎とも言える歴史・科学・数学などを主に学んだ。13歳の長沢鼎だけは大学に入れず、グラバーの実家へ引き取られ、地元の中学校で最優秀の成績を修めた。現地では「薩摩スチューデント」と呼ばれて評判になったようで、彼らの優秀さや礼儀正しさを賞賛する記事が現地の新聞に掲載されている。

 

その頃の日本は薩長同盟が結ばれ、幕末動乱の最中。薩摩藩においては軍事費の増大、第二次留学生の米国派遣などのため、留学1年後には藩からの送金が途絶え、留学生の多くは帰国せざるを得なくなったが、留学生たちは習得した学問や技術、そして藩という枠にとらわれないグローバルな視点で日本の近代化に貢献している。 彼ら薩摩藩英国留学生の帰国後の主な功績は、下表を参照ください。

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