天神ビッグバンの奥座敷

那珂川と薬院新川と国体道路（国道202号）に囲まれた西中洲。文字どおり那珂川を跨いで中洲の西側に位置し、薬院新川を挟んで天神と接している。那珂川と薬院新川の合流地点には水上公園があり、天神ビッグバンのプロジェクトのひとつとして再整備され、2016年7月に「SHIP'S GARDEN」としてリニューアルしている。

西中洲には、中洲に隣接していながら落ち着いた佇まいがある。風俗店、パチンコ店、ゲームセンターの新規出店や広告を禁じる「西中洲地区建築協定」（2004年5月認可）があるのもその要因のひとつだが、「街全体が大人の隠れ家」と言われるだけあって、細い路地、洗練された店が醸し出す独特の雰囲気そのものがこのまちの魅力となっている。

「天神ビッグバンの奥座敷」と西中洲を位置づけている福岡市では、石畳による道路整備と景観誘導を計画している（2018年春に一部供用開始予定）。

高島宗一郎市長は2月14日の会見で、「西中洲は天神と博多をつなぐ大事なポイント。狭い路地を拡幅するよりも狭い路地の魅力や界隈性を活かした情緒ある路地空間を創出して天神ビッグバンに奥行きをつけていきたい。また、雨が降った後に絵になるような場所をつくりたい」と述べている。

旧福岡県公会堂貴賓館

西中洲側の天神中央公園内にある「旧福岡県公会堂貴賓館」は、1910（明治43）年の第13回九州沖縄八県連合共進会の開催に際し、会期中の来賓接待所を兼ねて会場東側の現在地に建設された木造2階建の洋風建築だ。設計は太宰府天満宮楼門、福岡県立図書館などを手がけた三條栄三郎で、数少ない明治時代のフレンチルネッサンスを基調とする木造公共建物として国の重要文化財として指定されている。

外壁は1階窓台から下の腰壁は白い化粧タイルを貼り、1階モルタル壁には目地を入れ、2階窓額縁や軒蛇腹をモルタルで造出し、外観を石造に擬している。内部は正面、玄関奥に階段室をとり、その左右に食堂、配膳室、応接室、事務室等を配し、2階は北東隅に貴賓室を設けるほか、寝室、化粧宴、談話室等を配し、各室とも異なった意匠となっている。

2005年の福岡西方沖地震では被害を受け、復旧・修理工事が行われた。現在は、福岡に残る貴重な近代様式建築として一般にも公開されている。