「神々の楽器」スタインウェイ

​　「楽器の王様」、ピアノ。そのなかでも「神々の楽器」として知られるのが、世界で最も有名なピアノの代表格でもあるスタインウェイ＆サンズ社のピアノだ。

１８５３年の創立以来、スタインウェイは１００を越える特許でピアノづくりに革命を起こし、近代ピアノ製造における基礎を築き上げてきた。特に創立後の三十年間で開発された革新的な技術は、同社がこれまでに取得している特許技術の半数以上を占めており、その多くは今では常識となっている音響理論など、当時の最新の科学研究に基づいたものだった。

スタインウェイはこの革新的な技術と強力なクラフトマンシップによって創立以来１６０年、業界を常にリードしてきたのだ。

「スタインウェイのライバルは、スタインウェイ」

これはスタインウェイのメーカー内部でよく使われる言葉で、新品のスタインウェイのライバルは中古のスタインウェイということだ。

最も丈夫なピアノとしても知られるスタインウェイは、適切な環境で、適切なメンテナンスをしていれば、そのままでも数世代は使用できる。なかには１００年前のピアノを完全修復してさらに次の１００年へ向けて使用されているものもあるそうだ。

当然、コンサートなどで用いるなら新しい時代のものが望ましいのだろうが、たとえ戦前のものでも楽器としての魅力は充分にあり、いわゆるスタインウェイの響き、「イニミタブルトーン（比類なき響き）」を聞かせてくれる。

また、中古のスタインウェイ（多くは50年～70年前のもの）には、調度品としての魅力も加わる。ホンモノだけが持つ雰囲気がその空間を支配し、単に「ピアノのある部屋」ではなく、「スタインウェイのある部屋」に変えてしまう。

テクノロジー時代の今日においても工程の80％が人の手によって進められ、専門の職人によって組み立てられるスタインウェイ。熟達したマイスターの手によって生み出されるそのピアノは、一台一台がオリジナルであり、芸術品なのだ。