暮らしにデザインを取り入れる［北欧家具・国産家具］

「素材の質がいいこと」、「作りがしっかりしていること」、「普遍性なデザインであること」。

この３つは永く使える家具の条件であり、それらを満たすためには、「質が高い選び抜かれた素材」、「高い技術を持つ熟練の職人」、「タイムレスなデザインを生めるデザイナー」が必要だ。そして、これらの条件を満たし、奇跡的に実現しているのが北欧家具として名高いＰＰモデラー社とデザイナーハンス・Ｊ・ウェグナーの作品だ。

ＰＰモデラー社は1953年に創設され、工芸デザインの伝統生産を手掛ける20数名の家族経営の工房で、唯一の目的は何世代にもわたって日々使い続けてもらえる、美しくそして機能的な家具を生み出すことだという。小規模ではあるが、その品質の高さと崇高なまでに貫かれたクラフトマンシップに魅せられた職人が世界中から入社を希望する世界に名を知られる工房だ。

ハンス・Ｊ・ウェグナー（1914─2007）は「芸術的で美しい」ということと「機能的で心地よい」という二つの矛盾を見事に埋めてみせたデザイナーだ。多くの作品は世界中の著名な家具コレクターに所蔵され、ニューヨーク近代美術館やドイツのヴィトラデザイン美術館、日本の佐川美術館など著名な美術館においても展示され、時を経ても変わらずに人々を惹き付け続けている。

これらの作品はいづれもデザインやフォルムはとてもシンプルだが、そこには確かにオンリーワンが宿っている。穏やかにアールを描いたパーツや木目の美しさを意識した加工が、大量生産の家具では出せない味わい深い魅力を醸し出し、作り手の細かい作業一つひとつを伝えてくる。それがシンプルな形でも他にない愛おしさを感じさせる。

どんなに複雑な人生であっても突き詰めれば、「家族が末永く幸せに暮らす」というシンプルな答に辿り着く。そして、そこにはオンリーワンの方法でしか辿り着くことはできない。永く使える家具が暮らしのなかにあることで、そんなことをいつも思い出させてくれるかもしれない。