フィンランドコーヒー事情［珈琲　日常の嗜好品］

森と湖の国・フィンランド。真っ先に思い浮かぶイメージと言えば、何だろうか。近頃では北欧型の高福祉高負担の社会保障・社会福祉システムを持つ福祉先進国、または教育先進国で、「国民の将来不安が少なく豊かに暮らせる国」という人が多いようだ。はたまた私のように単に、「寒い国」「オーロラ」「サウナ」「冬季オリンピックで活躍する国」「携帯電話のノキア」「ムーミン」という人もいるかもしれない。しかし、「フィンランド＝コーヒー」と思い浮かべる人がどれだけいるだろうか。

フィンランドでは、国民の９割がコーヒー愛飲者で、国民一人当たりの消費量は世界２位（１位はルクセンブルク、３位はデンマーク）、平均して一日に３、４杯はコーヒーを飲む。就労中のコーヒータイムも法律で定められていて、雇用主は午前、午後の２回、コーヒーを飲むための休憩を与えないといけないというほど、コーヒーが生活に欠かせない「コーヒーの国」なのだ。近年ではコーヒーの価格が急騰しているそうだが、その影響を受けることもなく消費量が安定しているところをみるとまさに生活必需品なのだろう。

フィンランドで飲まれているコーヒーの95％強がペーパーフィルターを使ったドリップ式で、コーヒー豆の焙煎は浅いものが全体の９４％を占めるという。これはフィンランドの良質な軟水との組み合わせが最適であるとか、ほとんどのコーヒー豆が生豆で輸入されることから、浅く焙煎された豆が消費者の手に渡るといった理由があるそうだが、全体的に優しい味で胃に負担を感じないような酸味を抑えた柔らかいものだ。（だからそんなに飲めるのか！）

「そんなに飲んで体に悪くはないのか」という疑問も湧いてくるが、心配はいらない。フィンランド栄養審議委員会では健康的な食生活のガイドラインを出していて、そのなかには「コーヒーを１日３〜５杯飲むこと」も含まれていて、摂取量の上限は設けられていない。日本でコーヒーと言えば、「嗜好品」「大人の飲み物」であるが、フィンランドでは健康への意識の高さからも多く飲まれているようで、コーヒーに対するイメージは日本の緑茶に近いものなのかもしれない。コーヒーはまさに「日常の嗜好品」なのだ。

目覚めの一杯、仕事中に休憩がてらカフェに飛込んで一杯、最近出てきたコンビニの淹れたてコーヒーをコンビニの前で一杯。コンビニの前での立ち飲みは少々切ないが（私のこと）、これらの時間が癒しの時間であることは確かだ。ただ、コーヒーをもっと日常の嗜好品として楽しむことができれば、もう少し豊かな人生を送ることができるかもしれない。フィンランドの人々のコーヒー事情を知って、そう思わされた。

■資料提供／ロバーツコーヒー福岡店

世界展開しているフィンランドを代表する大手コーヒーショップ。福岡初進出の店舗で、フィンランド式のコーヒーが楽しめる。

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